戻る
雷雨だ。凄まじい雨と風と雷が鳴り響いている。
俺は、そんな港にいる。日本刀一本を片手に持ち、たたずんでいる。
そう、『奴』を目前にして復讐の炎を燃やしながら。
『奴』に飛び掛らんとして、今俺は駆け出す。
１年前のことを思い返しながら・・・
俺の名前は池岡正。１７歳。高校２年だ。
１ヶ月前俺は最愛の彼女を亡くした。
自殺だった。どうしようもない憤りを感じた。
いじめだった。俺のせいでもあった。
１年前、俺は彼女と出会った。
何気なく、俺のお気に入りのマンガを買うため、本屋に入っていった。
そこで出会った。彼女は小学校からの知り合いで昔よく遊んだ。
だけど、中学に入ってから違う学校に入って全く会わなくなっていた。
昔から好きだった。その気持ちを一時も忘れたことは無い。
そんな日に出会った。彼女はアルバイトの途中だった。
そのときは、特に喋ってはくれなかった。
だけど、その本屋に行くたびにますます魅かれていった。
１ヶ月後ついに俺から声をかけて時間をもらって久々に喋った。
うれしかったの一言だった。俺は、決心した。
告白する。
結果はＯＫだった。
それから、俺たちは付き合うことになった。
しかし、時を同じくして俺は『奴』に接触を受けた。
『奴』は中学のときから学校が一緒だった。
別に同じクラスになったことは無かったし、第一去年までそいつが居た事自体知らなかった。
そして、高校に入ってついに同じクラスになった。
高校に入ってすぐ、俺はいじめられた。
『奴』が中心だった。
変なあだ名をつけられて、はっきり言ってウザイ。
俺は、同じクラスになったときから『奴』が嫌いだった。そう、いじめられる前から。
『奴』は笑っていないのに薄気味悪い笑みを浮かべているようで、笑っているときは異常な下品さとウザさが供わっていた。
それなのに、『奴』の周りにはたくさんの仲間がいた。何故、あんな奴に仲間がいるのか不思議でしょうがない。もはや、あいつの仲間なんて、皆同類でしかなかった。
『奴』の笑みは俺を不快にさせた。まるで、心の中を見透かして俺をあざけ笑っている様な気がしたからだ。『奴』はまるで、俺の心の中を見透かしたような言動を取り、俺をいじめた。
俺は、我慢していた。
一方、俺たちカップルはうまくいっていた。
ある日、遊園地に遊びに行った。
楽しい、２人きりの時間を過ごす中で彼女は口を開いた。
「ねえねえ、正」
「なんだよ」
「人間って何なんだろう？」
あまりに唐突な彼女の質問に俺は戸惑った。
「さあなあ。やっぱ、一人一人違いがあって面白いものじゃないのかなあ・・・」
「そうだね」
「で、なんだよ」
「あのね。やっぱり、一人一人って言うけど同じような人がいないとやっぱり人間って生きていけないと思うんだ。例えば、私と正みたいに。だから、やっぱり私には正が必要みたい」
「そうか」
俺は、それもそうだと思った。それに、俺も彼女が必要だ。
「だから、正。あなたはこのままでいて。たとえ私が危険にさらされても、助けようとしないで。あなたの命が私の命だから」
「わかった」
俺は深く頷いた。
もう夜になっている。
だけど、時間は永遠に感じられた。彼女のその言葉が、俺の胸に深く突き刺さった。
携帯の着メロさえも耳に入らない。
本当に時間が永遠に感じられた。
また学校の話に戻るが、本当にこっちは不愉快だ。
俺の学校に彼女はいない。学校の友達もそこそこしかいない。
学校は校則で縛ってばっかりで面倒のめも見やしねえ。
大体、携帯やMD持ってきたからってなんなんだ。そんなに、取り上げてえならそこらへんで恐喝でもしてろ。そんで、ケーサツに捕まりやがれ。
そして、親も親だ。意味も無く、イライラしたらボコってきやがって。
説教も長ったらしい。
やっぱり、つまんねーや。
学校の成績は上げてる。常に１０位以内に入るほどだ。なのに、文句ばかりタラタラと並べる。
俺に対するいじめもひどくなってきていた。
机の中に、画鋲とか入れられた。
本当に腹が立つ。文句があるなら、俺に直接言えってんだ。
１月だっただろうか、『奴』は授業中に「池岡さっさと逝け！！てめえなんて、人間のくずじゃボケ！」とか言ってきやがった。
俺はついにキレた。『奴』を完膚なきまで叩きのめしないと気がすまない。
俺は、我を忘れて『奴』に飛びかかった。
教師が止めにきやがった。
「こらー！！。やめんかー。ここの難しい試験を通ってきた優秀な生徒のすることじゃないんだー！！！！！！」
「あ？ウゼーんだよ」
俺は、思わず叫ぶ。
そして、『奴』ボコボコにしてやった。
それが原因だ。俺は生活指導にまわされた。
俺は停学を喰らった。我を忘れていたとは言え、恥ずかしい話だ。
僅かな救いといえば、『奴』が俺をいじめていたことが原因で、一網打尽で謹慎処分を喰らいやがったことだ。
俺は、ブルーな気持ちで家に帰った。
帰り道、久しぶりに彼女に会った。
不安なことは、俺は彼女に決して話しはしなかったが、この時ばかりは話さずにはいられなかった。
「俺さあ、前にも言ったけどいじめられてるって言っただろ？」
「うん」
「今日さあ、俺そいつ思いっきり殴っちまってさあ、停学喰らっちまったんだよ」
彼女はそれを聞いても表情一つ変えなかった。
「でもね、正が正しいって思えたのならそれでも良かったんじゃない？」
この彼女の言葉で、だいぶ俺の気持ちは軽くなった。
だが、その日から彼女の様子がおかしくなってきた。
何度携帯で電話しても出ないし、出会っても話はそこそこ。
ついに、新学期になった。
その日だった。彼女から、「悲しまないで」という彼女らしからぬメールが送られてきたのは。
何かおかしい。
俺は、彼女の両親に連絡を取ったが昨日からいないらしい。
警察に捜索願を出して、俺は町という町を駆け回った。
しかし、人間の限界だ。一日かかっても見つけることはできなかった。
結果は悲惨だった。彼女は隣の市のビルの屋上から飛び降り自殺体で見つかった。
俺には自殺の原因がわからなかった。「俺が、彼女を追い詰めていたのだろうか？」と疑ったが答えは出ない。
俺は、ますます日常が憂鬱になった。
ある日、彼女の友達が俺に彼女が自殺に至った理由を語ってくれた。
彼女の名前は優と言った。
「優は、１月ぐらいからある子からいじめられるようになったの。何が気に入らないのかわからないけど。もうひどかったよ。
休み時間ごとに暴力振られるし。」
俺は彼女の協力を得てそいつを探し出した。なんとそいつは、『奴』の彼女だったのだ。
悔しかった。１月は俺が停学を喰らったときだ。奴め、俺に逆恨みして優を自殺させやがったんだな。
激しい憤りを感じた。
復讐の炎が俺の胸に宿った。もう、心は闇だった。
・・・
今、俺は自分のために『奴』を殺そうとしている。
使い慣れた、日本刀を片手に『奴』を一突きに。
許しがたい。許せない。ドス黒い感情が俺の胸を巡る。
雨がキツイ。雷が鳴っている。復讐には最高のシチュエーションだ。
この日のために、１ヶ月道場に通った。そして今日、『奴』をこの港に呼び出してやった。
もう、『奴』は目と鼻の先だ。
俺は振りかぶる。「ザクッ！！」と言う音がした。
やった・・・ついに、無念を晴らしたんだ・・・
目を開いた。しかし奴は、いつもと変わらぬあの薄気味悪い笑みを浮かべているだけだ。
なにかがおかしい。
俺は自分の腹を見た。サバイバルナイフが刺さっている。そこから流れ出る血が、豪雨で薄まっていく。
殺したんじゃない。殺されたんだ。俺は悟った。
俺は日本刀を握った右手を見た。右手は空を切って、まるでコンニャクのようにぶらんと垂れ下がっている。
『奴』はサバイバルナイフを抜いた。
間髪いれず、刺された。
「はあ。あかんなあ。どうせ、俺はてめえが俺をここに呼んだときから、殺す気やってんけど。気付かんかった？」
「馬鹿野郎・・・気付くわけ・・が・・・ねえだろ・・・が。」
俺はもう息絶え絶えだ。
もう一回打撃を喰らった。
もう、俺の体は動かない。気が遠くなる。前が、霞む。
ああ俺はやっぱり逝っちまうんか・・・
ドサッ・・・
俺は倒れた。雷雨の中で、血が薄まるのを見ながら・・・。彼女の事を思い出しながら。
俺は直に意識がなくなるだろう。
薄れ行く意識の中で、彼女の「あなたの命が私の命だから」という言葉が鎮魂歌（レクイエム）に乗せて聞こえてきた・・・
あとがき
武神の小説第１弾です。
いやー、難しいですな。
takaさんのようにはいきません。
初めてなので、よくわからなかったですががんばりました。
ご意見、感想はtakaさんの方にどうぞ。
直接教えてもらいます。
後、あんまりひどい感想はやめてください。傷つくから。（笑
スタッフロール
ディレクター：武神
プロデューサー：貴
シナリオ：武神